目次
研究テーマ
価格で選択肢を閉じず、自分が感じた価値を基準に選ぶと、買い物の満足度は高くなるのか。
背景
人生で初めて、45,000円のバッグを購入した。
以前、私は「似合う服」が知りたかった。でも本当に探していたのは、自分らしさだった。というブログを書いた。

その研究を通して、これまで置き去りにしていた「好き」という感覚を、少しずつ取り戻すことができた。
以前とは違う価値観を持った自分がバッグを選んだら、いったい何を選ぶのだろう。
そんな興味から、普段はあまり行かないデパートでバッグを見ていたところ、自然と足が止まる商品があった。
キャメル色の柔らかな質感と、かっちりしすぎないシルエット。
理由を考えるより先に、なんとなく惹かれていた。
それが、ジビエ革を使用したブランドとの出会いだった。
バッグに触れてみると、驚くほど柔らかく、優しい手触りだった。
感動していると、店員さんが自然に話しかけてきた。
私は、お店で店員さんから話しかけられるのがあまり得意ではない。
しかし、その店員さんからは商品への熱い思いが伝わってきた。話を聞かずにはいられなかったし、不思議と嫌な気持ちにもならなかった。
ブランドの理念や、手間暇をかけて生み出された触り心地の理由、廃棄されるはずだった鹿革を製品として生まれ変わらせる物語。
話を聞くほど、バッグへの愛着が増していった。
最初は見た目に惹かれ、触り心地に感動し、背景を知ることでさらに好きになった。
しかし、話を聞きながら値札をちらっと見ると、そこには「45,000円」と書かれていた。
これまで私は、バッグを選ぶ時に、
- 5,000円以下
- 機能面で問題がない
- 服に合わせやすい
- なるべく無難なもの
という基準を使っていた。
そんな私にとって、45,000円のバッグは完全に常識の範囲外だった。
「こんな値段のものを買う意味が分からない」
「これでなければならない理由は何なのだろう」
そう思う一方で、バッグのシルエットや雰囲気には、店員さんから説明を受ける前から惹かれていた。
さらに、作られた背景を知ったことで、とても特別なものに思えていた。
その場では気持ちを整理できず、いったんお店を出て、夫と晩ごはんを食べることにした。
食事をしながら、改めてブランドのサイトを確認した。
お店の空気や店員さんの話から離れ、落ち着いた状態でもう一度客観的に見てみる。
すると、素材や製法、作り手の手間、修理しながら長く使える仕組みなど、自分なりに価格の理由を理解することができた。
夫に意見を聞いてみると、こう言われた。
値段で制限をかけるのは良くない。
値段を一度置いて、それ以外で判断してみたら?
そこで私は、価格をいったん判断材料から外して考えてみた。
このバッグが5,000円だったとしても欲しいか。
見た目は好きか。
触り心地は好きか。
長く使いたいと思うか。
修理しながら育てたいと思えるか。
ブランドの理念に共感しているか。
答えは、すべて「はい」だった。
私たちは食事を終えると、すぐにお店へ戻った。
そして、人生で初めて45,000円のバッグを購入した。
仮説
価格や機能だけで判断するのではなく、自分が感じた魅力や商品の背景への共感も含めて選んだものは、使うたびに喜びが生まれ、長期的な満足度も高くなるのではないか。
考察①
物語は「好き」を生んだのではなく、「価値」を深めた
私は最初、ブランドの理念や鹿革の背景を聞いたから、このバッグを欲しくなったのだと思っていた。
しかし振り返ってみると、店員さんに話しかけられる前から、バッグの前で自然と足を止めていた。
最初に惹かれたのは、バッグのシルエットや色、柔らかな雰囲気だった。
そして、実際に触れた時の優しい手触りに感動した。
つまり、商品の物語が、私の中になかった「好き」を作り出したわけではない。
バッグそのものへの「好き」は、理由を説明できるよりも先に、すでに始まっていた。
その後、
- 捨てられるはずだった鹿革
- 製品として生まれ変わるまでの手間
- 作り手の思い
- 修理しながら使い続けられること
- 時間をかけて革を育てられること
を知ったことで、すでに感じていた魅力に理由が加わった。
物語は「好き」を生んだのではなく、その「好き」を、45,000円を払ってでも手元に置きたいと思える「価値」へ深めたのだと思う。
考察②
「価格」ではなく、「価値の内訳」を見るようになった
これまでの私は、商品を見た時に「高い」と感じたら、そこで検討を終えていた。
高いものは、自分には必要ない。
安くて機能に問題がなければ、それで十分。
その判断にも合理性はある。
しかし今回は、価格だけではなく、
- 肌触り
- デザイン
- 鹿革という素材
- ブランドの理念
- 製品が完成するまでの手間
- 廃棄されるはずだった革を活用していること
- 修理しながら長く使えること
- 使うことで風合いが変化すること
- 自分自身で育てたいと思えたこと
を一つずつ考えた。
そして、「この価値なら買いたい」という判断になった。
ブランド名だけに価格がついているのではなく、素材や製法、作り手の手間を含めて、自分なりに価格の理由を理解できた。
私は、単純に高いものを買えるようになったわけではない。
価格という一つの数字だけで判断するのではなく、その価格の中に何が含まれているのかを見るようになったのだと思う。
考察③
「好き」を、正式な判断材料として扱えるようになった
研究を始める前の私なら、45,000円という価格を見た時点で、購入する可能性を閉じていたと思う。
どれだけ惹かれていても、
「バッグにそんなにお金をかける意味が分からない」
「もっと安くて似たものがあるはず」
と考え、自分の気持ちを説得して、その場を離れていただろう。
しかし今回は、価格だけで選択肢を閉じなかった。
自分が本当に価値を感じているのかを、一つずつ確認した。
そして最後に、「私はこのバッグが好きだ」という感覚を、購入を決めるための正式な判断材料に加えることができた。
これは私にとって、価格以外の価値を信じて選んだ初めての買い物だった。
今回わかったこと
購入してから数日が経ち、実際にバッグを使ってみた。
このバッグを持って出かけるだけで、少し嬉しい。
目に入るたびに、触れるたびに、「買って良かった」と思う。
45,000円という金額は、今でも私にとって決して安くない。
それでも後悔は全くしていない。
自分が何に価値を感じているのかを考え、自分の価値観で選んだからだと思う。
好きなものを選ぶことは、ただ物を手に入れることではない。
自分の価値観を、具体的な形にすることなのかもしれない。
また、このバッグをきっかけに、自分の「好き」をもっと探したいと思うようになった。
私は革製品が好きなのかもしれないと思い、牛革の商品もいくつか見てみた。
しかし、牛革のかっちりとした質感には、あまり心が動かなかった。
私は革製品全般が好きなのではなく、鹿革の柔らかさや、力の抜けた雰囲気が好きなのかもしれない。
「革が好き」という大きな分類から、「柔らかく、優しい質感の鹿革が好き」という、より具体的な好みが見えてきた。
こうして少しずつ自分の好みを明確にしていけば、自分にぴったりのものに出会いやすくなる。
毎日の中に、見るたび、触れるたび、使うたびに少し嬉しくなるものが増えていく。
そんな生活を作っていけるのではないかと、楽しみになった。
次回研究
- 「好き」を基準に選んだものは、長く愛用できるのか
- 高価でも満足できた買い物と、後悔する買い物の違いは何か
- 自分が価値を感じる商品には、どのような共通点があるのか
